初会話

『○〇〇までお願いします』

後部座席から流暢な日本語が聴こえてきた。

えっ?

日本語しか話せない俺は一気に安堵した。しかもなんて心地良い声なんだろう。

『お客さん、日本語上手ですね』

『えっ、私日本語しか話せませんけど』

『失礼しました お客様。てっきり外国から来られた方だとばかり、いやはや、とんだ失礼を』

『ふふふ。よく間違われます。わたし、ヨウコと言います』

『えっ、あっ、あはっ、ヨウコさん、ですか。ど、どうぞよろしくお願いします』

おいおい会ったばかりのお客が名前を言っただけで、俺はなにを舞い上がっているんだ。客からは俺の顔が見えなくてよかった。俺は今赤面している。

あらためてルームミラーで客を見た。相変わらず頭にすっぽりかぶったフードから鼻と口だけが見えた。それだけでも、そう、それだけでも、

『綺麗だなぁ』

そんな言葉を口に出したくなる。